会員のみなさまへ(2008年6月)

日本栄養・食糧学会 会長(平成20・21年度):矢ヶ崎一三

日本栄養・食糧学会:矢ヶ崎一三

この度、本学会のホームページリニューアルに際し、会員のみなさまにご挨拶申し上げます。

本学会は、栄養科学ならびに食糧科学に関する学理および応用の研究についての発表、知識の交換、情報の提供を行う事により、栄養科学、食糧科学の進歩普及を図り、わが国における学術の発展と国民の健康増進に寄与することを目的としております。

日本栄養・食糧学会創立50周年記念として発刊された「食を楽しみ健やかに生きるために」(1997年刊行)の「歴史の章」に学会創設前から創設期の事が記されております。その中に、「栄養と食糧は両々あいまってはじめて栄養改善の実を挙げることができる」「栄養行政は広く食糧行政の各方面と協力しなければならない」という記述が何回も出てきます。日本栄養・食糧学会の名称の中央に位置する「・」は、栄養学と食糧学は車の両輪であり、両者が協力しあうことの象徴であると考えております。同書によると第1回栄養・食糧学会総会ならびに講演会は1947年(昭和22年)5月に開催されております。私事で恐縮ですが、私はその翌年に生まれ、まさに戦争を知らない団塊の世代の一人です。

時を経て、創立60周年記念行事は2007年5月の第61回大会(京都)の時に開催されました。そして、本年2009年5月には長崎で第63回大会を迎えました。この間、浮き沈みはあれ我が国の経済発展はめざましく、戦後間もないころの食糧不足の時代からは想像も出来ないほどの食品があふれております。もはや栄養失調などあるはずもない、というほどまでになりました。しかし、栄養失調死(主に経済的理由による)は依然として存在することが最近でも報道されております。

超高齢社会となったわが国の人々は、いわゆる「生活習慣病」に深い関心をよせ、「生活習慣病」の予防に資する食品や食品成分、食生活のあり方について研究の進展と情報の提供を求めています。その一方で、食糧自給率や入手する食品の安全性にも不安を感じています。健康の増進や疾病の予防、克服などの課題について調査研究すること、また、人類の持続的発展を可能とするために、環境問題と並んで食糧問題、エネルギー問題など地球規模の諸問題の解決に役立つ調査研究をすることが期待されています。これらのうち栄養・食糧学の問題を究明・解決するために、医学、農学、薬学、生活科学、健康科学、理工学などの関連する諸学術領域の研究者が大同連携して、情報交換、研究協力などを行い、このような課題に対して、直接的あるいは間接的に応えることが本学会および本学会会員に課された社会的責務であると理解しております

このような本学会が、将来のさらなる発展のために短期・中期的に行なわなければならない課題がいくつかございます。その一部を紹介致します。

これは本学会に限らないことですが、平成20年12月から法人に関する新しい法律が施行されたことにより、学会は「公益法人」か「一般法人」かのどちらかを選択しなければなりません。なお、新制度施行後5年間は特段の手続きをとることなく従来の法人(特例民法法人)として存続することができますが、平成25年11月末の移行期間終了までに移行申請を行なわなければなりません。特例民法法人から公益社団法人へ移行する、特例民法法人から一般社団法人へ移行する、特例民法法人から一般社団法人への移行を経て公益社団法人へ2段階で移行する、という三つの場合が考えられます。理事会のもとに新法人化に関するワーキンググループをつくり、専門家の意見も伺いつつ、実行持続性の可能性、学会の新定款や組織変更、申請の日程的な点も含めて、検討を進めているところです。平成20年度にはじめて行なった本部と支部との会計合体化も、学会内ガバナンス強化の一例です。新法人化の件は、学会にとっての最重要課題と言えましょう。

もう一つは学会の国際的活動についてです。前執行部からの懸案である2015年のアジア栄養学会議(12th ACN)の日本への誘致の件に関しては、既に本学会を中心として日本誘致を表明しております。 2009年10月のタイでのFANS(Federation of Asian Nutrition Societies)の会議で結論が得られる予定です。また、国内大会において英語によるシンポジウムを行なっておりますが、第64回大会においてもこれを企画したく考えております。これらのことを通じて、海外とくにアジアの関連学会との交流が広がることが期待されます。

学会を取り巻く状況はきびしく、とくに経済状況の低迷は学会運営にとりましても大きく影響致します。会員の皆様のご支援とご協力をお願い致します。