新型コロナウイルス感染症の拡大は留まることなく続き、医療崩壊が危惧されることを踏まえ、政府は緊急事態宣言によって、対象となる自治体の感染拡大を抑止し、感染者の治療体制の再構築を図ることを決めました。今後も外出の自粛が続き、長く住居内で過ごさざるをえず、栄養状態の悪化が懸念されます。これを防ぐために、以下のことに注意をお願いします。

正確な情報に基づく適切な行動をとる

日常の食糧需給体制は確保されていますので、必要以上の買い込みは避けてください。SNS上のデマ・流言飛語に惑わされず、正確な情報に基づいて行動してください。本学会でも、食糧の流通状況に異変を生じた場合、その都度正しい情報を発信致します。

食事前の手洗い・消毒を励行する

新型コロナウイルスの主要な感染経路は、飛沫感染と接触感染であると考えられ、食品を介して感染したとする事例の報告はありません。しかし、汚染された手指から経口的に体内に侵入することが懸念されています。食事前には、手洗い・消毒を心がけてください。また、食器についても同様で、清潔な取り扱いに努めてください。

規則正しい生活の中でバランスのよい食事を摂る

一日中家の中で生活することによって、食事を摂る時間が乱れることが想定されます。朝食を抜き、夕食が遅くなるなど、食事の時間帯が不規則になりがちです。食材も調理の必要のない出来合いのものやインスタント食品を選びがちになります。このことによって、揚げ物が増え、食物繊維が不足するなど、栄養のバランスを崩すことになります。とりわけ、学校給食が無くなると子どもたちでは、お菓子などの間食が増え、運動不足から体重が増加することも心配されます。規則正しい食事時間と栄養素のバランスをとるよう心がけて下さい。糖尿病などの生活習慣病をお持ちの方に、特に注意が必要です。

高齢者のフレイルを予防する

低栄養状態では感染症を発症しやすいことが知られています。高齢者では活動量が低下し、食欲が減退することでフレイル(身体的・精神的な脆弱状態)に陥りやすいとされており、これが感染のリスクを増大します。まずは適切なエネルギー量を摂取すること、特にタンパク質を多く摂るように留意してください。また、ビタミン(C、Eなど)やミネラル(カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛など)も大切な栄養素で、新鮮な生野菜や果物に多く含まれています。ラジオ体操など、家の中でもできる運動の工夫も必要です。

その他に注意していただくこと

糖尿病や腎臓病などをはじめ既に治療を受けている疾患がある場合は、適切な栄養の摂り方などについて、主治医とよく相談して取り組んでください。

適正な栄養を通して抵抗力を高め、新型コロナウイルス感染症から身を守りましょう。

公益社団法人日本栄養・食糧学会 会長 宇都宮 一典