75周年目の新年にあたって

公益社団法人日本栄養・食糧学会会長
加藤久典

公益社団法人日本栄養・食糧学会会長 宇都宮一典

会員の皆様、明けましておめでとうございます。昨年は新型コロナ感染症による緊張感のなかでも東京オリンピック/パラリンピックや東京栄養サミットなどの重要なイベントが、工夫をこらして開催されました。本学会の現執行部の任期は残り半年弱となっていますが、会長として会員の皆様にお目にかかってご挨拶する機会がない状況で本日に至っているのは残念に思います。

そのような状況においても、学会の活動は活発に行われていると感じています。例えば、昨年の第75回大会はオンライン開催となりましたが、多くの発表をいただきました。特別講演やシンポジウムも充実したものとなり、たくさんの方にご参加いただくことができました。第22回国際栄養学会議(22nd IUNS-ICN)の延期を受けて急遽開催することになった大会で、半年という短い準備期間での開催でしたが、実行委員長の喜田聡先生(東京大学大学院)をはじめとする実行委員の先生方のご尽力と、会員の皆様の素早い対応のおかげによる成功と思っております。大会会頭として心から御礼申し上げます。

この場をお借りして、新型コロナウイルス感染症がもたらす社会情勢における、あるいはコロナ禍を経験した後における学会の運営について考えてみたいと思います。この1年半あまり、お互いに顔をあわせての学術活動、会議等の仕事、講義などの機会がほとんどないという、誰もが経験したことのなかった状態が続きました。それにより、直接会うことで生まれるはずの多くの機会が失われたといえます。例えば、さりげない会話の中から生まれるアイデアの交換、人と人との新たな出会いなどが大きく減ったのはデメリットといえます。特に後者は、新入学生や新入社員の方への影響が大きかったでしょう。オンラインでの講演や発表、講義については、聞いている方の反応が分かりにくい、発言がしにくいことがあるなどもデメリットと考えます。

一方で、いろいろなメリットも見えてきました。それは、オンラインで様々な活動ができる基盤が整備されてきたこと、人々がそのようなシステムに慣れたことに起因するものです。いくつか具体例を挙げます。まず移動の時間やコストを削減することが可能となりました。大会や支部大会も、遠方にいても参加しやすく、場合によっては海外からも簡単に参加あるいは発表できるといえます。実は昨年私は可能な限り多くの支部の大会を聴講させていただき、学びつつ各支部の活動の様子を感じることができました。このように、特に支部会においては従来よりもはるかに多い参加者を得られているという例を多く聞いております。また、場合によってはオンデマンドでの配信も活用され、ワーク・ライフ・バランスの改善にも役立っています。今後はこのようなメリットとデメリットをうまく勘案して、イベントや仕事のやり方を工夫していくことが可能となったといえます。

さて、そのような状況で、昨年の巻頭言にも書かせていただきましたが、やはり人と会うこと、すなわち対面開催への渇望は膨らんでいるのは間違いないと考えます。第76回大会会頭の芦田均先生(神戸大学大学院)も、対面での開催を目指して準備を進めておられます。さらに今年は22nd IUNS-ICNも控えています。こちらは世界中から参加者が集まるだけに、全面対面式での開催が難しくなっているようには感じていますが、状況を判断して適切な時期に決断する予定です。IUNS本部と日本の組織委員会で連絡を密に取って準備を進めています。IUNS-ICNは現在、一般発表演題を募集していますので、奮ってご登録ください(https://icn22.org)。スポンサーの募集も引き続き行っていますので、ご興味のある企業様におかれましては是非ご連絡ください。

表題にありますように、今年は本学会設立75周年にあたります。なお、国際栄養学連合(IUNS)も75周年ということで、IUNS-ICNはその記念の大会でもあります。現在本学会75周年の記念事業を計画し、実行に向けて鋭意準備を進めています。神戸の第76回大会では、記念式典、記念特別講演、祝賀会などが計画されています。出版事業も準備中です。多くの会員の皆様のご参加やご協力をお願い申し上げます。現執行部では、75周年以降のさらなる学会の発展に向けて様々な新しい試みについて議論をしています。特に日本学術会議と日本栄養改善学会と本学会が共同主催するIUNS-ICNというマイルストーンともいえるイベントを成功させることはもちろんですが、それ以降本学会が会員の皆様に何を提供できるか、公益社団法人として何を発信できるか、知恵を絞っています。会員の皆様におかれましては、忌憚のないご意見あるいはアイデアをお寄せいただけると幸いです。