会長あいさつ
会員のみなさまへ
公益社団法人 日本栄養·食糧学会
代表理事·会長(令和6·7年度):芦田 均
令和6年5月24日(金)に開催された公益社団法人 日本栄養·食糧学会の社員総会および理事会の議を経て本学会の代表理事·会長に選任されました芦田均でございます。会員の皆様に一言ご挨拶を申し上げます。
2020年に始まった新型コロナウイルス感染症は、本学会の活動にも大きな影響を与えましたが、「新型インフルエンザ等感染症(いわゆる2類相当)」から令和5年5月8日から「5類感染症」に移行され、人々の暮らしもコロナ前に戻ってきました。本学会も全面対面開催ができるようになり、学会での議論や会員間の交流も活気を帯びて参りました。
本学会では令和4年6月に創立75周年記念事業の一環として、私が会頭を務めさせていただきました第76回年次大会の際に75周年記念講演会などが開催され、その後、令和5年12月に日本栄養·食糧学会創立75周年記念誌として「栄養·食糧学が拓く未来のために~学会の歩んだ軌跡と会員からのメッセージ~」が建帛社から出版されました。本学会の会員の方には特別価格で購入いただけますので、是非手に取って頂ければ幸甚です。
学会活動がほぼ正常にできるようになってきた状況の下で、代表理事·会長の2年間の任期の間に、日本栄養·食糧学会をより一層発展するように尽力を尽くしていきたいと存じます。具体的には、本年5月に福岡市で開催された第78回年次大会の総会資料に記載されている事業計画を基に、以下の5つの柱を立てて学会の発展を目指す活動を行います。
柱1:会員増を目指した活動の継続
本学会だけでなく、多くの学会で会員の減少が見られており、学会運営に影響を及ぼしかねない状況です。栄養科学並びに食糧科学の振興と研究の活性化のために、年次大会や支部大会において魅力的な企画を立てて非会員の方々に講演をして頂くとともに会員になって頂けるような活動してまいります。
柱2:若手会員の情報発信の場の構築
本学会では、第70回大会から学生優秀発表賞を設けて、学生の発表を増やしてきていますが、まだ若手の会員の活躍の 場が少ないのが現状です。そこで、上記の柱1と関連しますが、若い世代の会員が情報発信して、相互に交流を図れるために年次大会や支部大会での「若手の会」を設けてシンポジウムなどを行うことや、学会誌に若手会員の企画での記事を記載することで、情報発信の場を提供し、ひいては学生会員が卒業·修了後に社会に出てからも正会員として継続して本学会に参画して頂けるような魅力ある企画を立案します。
柱3:国際交流の強化
令和4年12月6日から11日まで、加藤久典元会長が組織委員長を務められた第22回国際栄養学会議(22nd ICN)が開催されたことはまだ会員の皆様のご記憶に新しいことと思います。早くも来年8月にはフランスのパリで23rd IUNS-ICNが開催されます。本学会としては、シンポジウムを企画してこのICNに臨む所存です。
また、令和9年9月にはマレーシアでアジア栄養学会議(ACN)が開催予定です。本学会の年次大会においては、国際交流委員会が大会時に国際シンポジウムを開催して参りました。ここ数年は韓国食品栄養科学会や台湾栄養学会と相互にそれぞれの国で国際シンポジウムを開催してきています。来る80周年には、記念事業の一つとして第81回大会において、韓国と台湾の両学会だけでなくアメリカ栄養学会にも参画頂く国際シンポジウムを開催する準備を始めています。
さらに、第78回年次大会で開催されたBritish Journal of Nutrition (BJN)のレクチャーは多くの聴衆を集めて盛会であったことから、このような海外の学術雑誌の編集局とのコラボレーション企画も継続していきます。現在、本学会の会員からBJNやJournal of Nutrition (JN)の編集委員に就任して頂く方を推薦しています。
柱4:宇宙食専門認定制度の推進
宇宙への関心が高まり、NASAが提案している月面探査プログラム「アルテミス計画」に日本も合意しており、宇宙空間での健康·栄養などの研究開発がより求められているため、「宇宙食健康認定制度」を設け、専門人材の育成や資格制度を設けることを計画しており、認定機関を本学会で担うべく内閣府と協議しながら進めています。宇宙食は、栄養面や保存のための包装の面などで災害時の救援食と関連するとも言われております。
このような観点から、本制度の構築は、極限状況下での健康·栄養を考えるうえで重要なものであり、早期から本件を着手しておくことで、将来的に学会の発展に寄与する可能性が高いと思っております。そこで、本事業を推進するために、来年の総会では定款を変更して、宇宙食専門認定制度検討委員会を中心に「宇宙食健康認定制度」を構築します。
柱5:ダイバーシティの推進
本学会は、他の学会と比較して女性会員が多いのが特徴です。しかし、多くの学会が加わっている一般社団法人 男女共同参画学協会連絡会に参加しておらず、令和6年度から「ダイバーシティ推進委員会」を設置して、連絡会に参加します。この委員会は、男女共同参画体制の構築を目標としますが、今後はジェンダーだけでなく多様な状況に対応できるように名称を「ダイバーシティ推進委員会」としております。
これらの5本の柱以外にも、医学系学会との連携は重要なことであると認識しております。言うまでもありませんが、本学会は日本医学会の第14分科会として加盟しています。年次大会で医学系学会のシンポジウムを開催し、創立75周年記念事業では、日本医学会から当時会長をされていた故門田守人先生にご参加頂き、ご祝辞を賜りました。本年は日本医学会TEAM事業への参画を介して、連携を密にしていく所存です。
本学会では、生活習慣病やフレイルの予防と治療、健康寿命の延伸と新たな健康課題の解決に関連する栄養·食糧学的研究の邁進を掲げております。しかし、最近健康食品関連の健康被害が起こり、吉田前会長を中心に、曽根副会長のご協力のもと、迅速な学会表明文をHPに掲載しました。このことは、学会として研究だけでなく、研究の出口にあたる商品に関する問題にも対応することになりました。今後、このような問題に迅速に対応できる体制を構築し、学術分野の発展に寄与するにとどまらず、社会との密に接した活動にも取り組むことが必要であると思います。
上記の柱に掲げた事項を中心に、会員の皆様が栄養·食糧に関する研究を推進して頂き、成果が社会貢献に繋がるように、学会としてサポートできる環境や体制を充実させていくことに努力したいと思います。微力ながら前会長の吉田博先生をはじめ、歴代の会長先生方からのご意見を賜りながら、理事、監事、ならびに庶務·会計幹事の先生方とともに学会運営を進めて参ります所存です。会員の皆様方のご支援とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申しあげます。